インプラントとは
基礎知識
インプラントとはこれまで歯を失った後の治療といえば、失った歯の両側の歯を削り失った歯の部分とつなげて固定する「ブリッジ」と言われる方法や、残っている歯にクラスプ(留め金)をかけて固定するいわゆる取り外し式の「入れ歯」が主流でした。どちらの方法も歯ぐきより上の部分の歯冠部は回復できても、縁の下の力持ちである土台部分「歯根」の回復は望めませんでした。
インプラント治療はこれらの方法とは大きく異なり、歯を失った部分の顎の骨に、歯の根に代わる人工の歯根を埋め込み、それを土台にして歯冠部を取り付け天然歯と同様の機能と見た目を回復することが出きる高度な治療法です。
現在主流となっている「オッセオインテグレイティッド・インプラント」は「オッセオインテグレイティッド」=「骨に結合された」「インプラント」=「埋め込まれたもの」という意味をもち非常によく骨とくっつき、しっかりと噛む力を受け止め長持ちします。まさに、乳歯、永久歯に続く「第3の歯」として注目される歯科治療です。
インプラントの歴史
インプラントの歴史は意外と古く、エジプトでは紀元前のものと思われる象牙や鉱石が埋め込まれた人骨が発見されたり、古代ローマ時代にも2~3世紀のものと思われる鉄製の歯根のようなものを埋め込んだ人骨が発見されています。中南米でもマヤ文明期にインプラントをしていた形跡も残っています。
近代になって、サファイア、コバルトクロム合金、ステンレス、金などなど、いろいろな材料でのインプラント治療が試されてきましたが、なかなか骨とうまく結合することがかないませんでした。
そのような流れの中、1950年代にスウェーデンのルント大学で整形外科医として研究を重ねていたブローネマルク教授は、ウサギを使ってのある動物実験の最中に、耐食性や対温度性に優れたチタンと生体骨が完全に結合することを、偶然に発見しました。
その後の様々な基礎実験と動物実験を経て、1965年、世界で初めてのチタン製インプラントによる初の臨床応用を30代の男性患者に施しました。これが、現在主流となっている「オッセオインテグレイティッド・インプラント」の始まりです。
インプラント治療を受ける前に
インプラント治療だけに関わらず、すべての手術には必ずリスクはつきものです。100%大丈夫です!という保障は残念ながらどこにもありません。しかし、インプラントに関する知識を深く広くもって頂くことと、しっかりとした意思をもって情報に惑わされることなくインプラント治療に向かう姿勢が大切です。
きちんとした知識や情報を持つことで、インプラントに対して過度な期待を抱くこともなく、逆に「恐い」「痛い」「値段が高い」などといった先入観だけでのみ治療を考えることもなくなるはずです。
インプラントは「魔法の治療」ではありません。しかしきちんと説明を受け納得したうえで十分な診査診断の元、適正な処置とその後のメンテナンスをきちんと継続して受けて頂くことができればあなたの将来にきっと「健康」と「QOL」の向上という福音をもたらしてくれることでしょう。
それには、以下のポイントをしっかり押さえておくことが大切です。
治療前のカウンセリングをしっかり受けてから治療にはいりましょう
現在の自分のお困りごと、不安に感じる事、インプラントに対する疑問点(治療期間・治療費・インプラント治療のリスク・メリット、デメリット・メンテナンスについてなど)を納得のいくまで説明を受け、しっかりと治療について納得した上で治療にとりかかることが大切です。
当クリニックではインプラント専門医やインプラント認定コーディネーターが専門的知識と多くの症例から得られた経験から、皆さんのどんな疑問にも誠意ある対応でわかりやすい説明を致します。どんなささいな疑問も残さないようご遠慮なく治療内容についてお尋ね下さい。
インプラント治療前の検査をきちんと受けましょう
歯を失ったからといって、すぐにインプラントを埋入できる場合ばかりではありません。手術前には、全身疾患の有無(糖尿病・高血圧・心疾患・甲状腺疾患・アレルギー・骨代謝性疾患・肝疾患・腎疾患・出血性素因など)とコントロール状態、そして口腔内の状態(歯周病・虫歯・咬み合せ・口腔粘膜疾患など)を診査し、治療の必要があれば処置し、きちんと改善してからインプラント治療に着手することが大切です。
そしてまた、インプラント埋入手術の前には顎模型を採取し咬合の診査を行ったり、レントゲン診査(パノラマ・デンタル・セファロ)による画像診断とともに、より詳細な情報を得るためのCT撮影も行います。そしてそれらによって得られた情報や資料を基にインプラントの治療の計画(インプラントの本数、種類、埋入するポイントなど)を綿密に立てていきます。
家を建てる時の設計図同様、この計画無にしてインプラント治療の成功はあり得ません。治療前の検査をきちんと受けて頂くことはインプランと治療を受ける患者様の義務でもあると考えます。
インプラント治療の利点と欠点
利点
- しっかりと強い力で噛む事が出来る
- 見た目が天然歯とかわらず美しい
- ブリッジなどのように自分の歯を削らなくてよい。
- 入れ歯のように自分の歯に留め金をかける必要がな歯の寿命が延びる
- 入れ歯のように取り外しの手間や違和感がない。
- しっかり噛めることで脳を刺激し、脳細胞が活性化される(認知症予防)
- よく噛んで食事をすることで消化能力も高まり全身の健康へつながる。
- 高い精神的満足度が得られる。
- 笑顔に自信が出てアンチエイジング効果も期待できる。
欠点
- 手術が必要
- 全身疾患やあごの骨の状態によっては手術ができない場合もある。
- 治療費がかかる(医療費控除の対象となります)
- ブリッジや入れ歯に比べ、多少治療期間がかかる
以上のような利点・欠点は考えられますが、いろいろな条件が満たされ、きちんとした診査・診断のもと、適正な施術が受けることができれば、インプラントは機能面・健康面・精神面のどの側面から見ても、皆さんの生活の質を向上させ、生き生きと明るい人生を送るための強い味方となってくれることでしょう。
最大の利点は、QOLの向上です。
インプラント治療の流れ
インプラントの埋め込み、インプラントの支台装着を一回の手術で行う術式です。2回手術を行う術式よりも治療期間は短くなりますが、骨の高さや厚みが十分にあることが条件になります。
Step.1
麻酔後、インプラント埋入部の骨に埋入窩(インプラント体を埋める穴)を開けます。当院ではより安全性を期すために、CTデータから解析された埋入位置をガイドするための外科用のマーカーを用いてピンポイントに穴を開けていきます。カバーキャップをして、場合によっては歯肉を縫合し手術は終了です。
Step.2
骨とインプラントが結合(オッセオインテグレーション)するのを3ヶ月位の期間待ちます。
骨がない部分に増骨手術をした場合にはさらに期間をおく場合もあります。インプラントと骨がしっかりと結合し、ゆるぎない人工歯根となるための大切な期間です。
Step.3
上部構造(土台と被せ物の歯)を作るための型採りをします。
Step.4
インプラントの上部構造(アバットメントとよばれる土台と人工歯)を装着します。咬み合せの調整を行い、即日からお食事を召し上がって頂けます。
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